晴読雨読

読書記録

なぜ必敗の戦争を始めたのか

『なぜ必敗の戦争を始めたのか    陸軍エリート将校反省会議』 編・解説 半藤一利


本書は、雑誌『偕行』に掲載された陸軍中枢にいたエリート達の座談会の記録を半藤氏が改めてまとめ、解説を加えたもの。


陸軍側から語られる座談会なので、一般に広く認識されている「陸軍悪玉論」に対し、海軍が善玉だったわけでもない…と言う部分を知ることができる。特に昭和15年の日独伊三国同盟、16年の南部仏印進駐が引き金となって、引くに引けない戦争への道を進んで行ったことがよくわかる内容だった。


…それにしても、当時の外務大臣のドイツ贔屓とヒットラーへの傾倒ぶり、あまりに楽観的な日独伊ソ四国協商構想を読んで驚き、いくら陸軍は対米戦など本当はするつもりは無かったとは言っても、陸軍、海軍間のコミュニケーション不全や情報共有の無さに愕然とし、何よりも重要な事を決める会議が会議とも呼べないグダグダな内容で、声の大きいものに押し切られるか、「国策」ありきで国力に関する調査など握りつぶされる様子に愕然とした。


この座談会も、戦後30年近く経って掲載されているとはいえ、海軍への不満と不信、本来取るはずだった陸軍の持論や作戦を海軍のせいで実行出来なかった恨み節が随所に見られ、どこが反省会議なのか…と苦笑いしてしまう部分も。最終結論として「陸軍大学校」の教育が悪かった(笑)で終わるとなるともう脱力するしか無い。ただ、その中で「戦さが嫌なら戦さを研究しなければならない。伝染病が嫌なら伝染病の研究をしなければいけない」との言葉は胸に刺さった。


〈日米戦争を避けるために日独伊三国同盟を結んだ。この逆説に興味ある方は是非お読みください〉とのf:id:aromatomoko:20190531220350j:imageご紹介で手にとった本書。ただでさえ歴史全般に無知な自分には本来なら読みこなせない本だが、半藤氏の要所要所の解説と小見出しに助けられて興味深く読んだ。