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読書記録

2019-01-01から1年間の記事一覧

宮廷神官物語

『宮廷神官物語 一』榎田ユウリ 聖なる白虎の伝説が残る麗虎国。飛び抜けた才により、十八歳で宮廷神官の職務を与えられた鶏冠は、現在数えで二十一歳の美貌の若者である。この鶏冠、優秀なのだが少々変わっている。王に次ぐ権力を持つと言われる神官を目指…

線は、僕を描く

『線は、僕を描く』砥上裕將 講談社 交通事故で突然両親を失ってから、心の中の真っ白なガラスの部屋に一人引きこもり、深い孤独の中にいる青山霜介。そこから出られないまま大学生になった彼は、展示会場設営のアルバイト先で、水墨画の巨匠、篠田湖山と出…

後宮の烏

『後宮の烏』 白川紺子 ナツイチの栞欲しさに購入(笑) 集英社オレンジ文庫。 後宮にありながら、帝の夜伽をせずに呪術を駆使して人々の願いを聞いたり怪異を解決する「烏妃」と呼ばれる特殊な妃がいた。先代から役割を引き継いだ寿雪と言う名の16歳の烏妃…

歌おう!感電するほどの喜びを!

『歌おう、感電するほどの喜びを!』レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫訳 レイ・ブラッドベリの作品に初めて触れたのは確か中学生の時だったと思う。『10月はたそがれの国』『何かが道をやってくる』を読んで陶酔状態になった記憶がある。その割に次々と作品を読…

ファイアガード

『ファイアガード』 鷹樹烏介 『ガーディアン』の続編。今回は初っ端から激しい銃撃戦が展開され、新しい人物が登場!と思う間も無く敵味方、ほぼ皆殺しその後も死屍累々。なかなかにバイオレンス強め、エグい展開に。前作で、このままラブコメ路線で行くの…

ガーディアン

『ガーディアン 新宿警察署 特殊事案対策課』 鷹樹烏介 23人を殺害し、最高裁で死刑が宣告された連続殺人鬼は、死刑執行された後にベッドの上で蘇生した。どうやら彼の「交感神経β受容体異常」という極めて珍しい体質が役に立つらしい…。簡単に言うと、薬物…

秘密 上下

『秘密 上・下』 ケイト・モートン 著 青木純子 訳 東京創元社 久々に読み応え満点のミステリーだった。 1961年の夏。イングランドはサフォークの田園地帯。《グリーンエイカーズ》と呼ばれる農家で暮らす絵に描いたように幸せな家族。その家族の16歳になる…

ピエタ

『ピエタ』 大島 真寿美 美しい物語だった。18世紀の爛熟したヴェネツィアの情景そのものがこの小説の主役ではないかと思えてくるほど、舞台となるヴェネツィアの街や人々の描写が素晴らしかった。 「ピエタ慈善院」は、捨て子を育てる役割の他に音楽院とし…

トリノトリビア

『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える野鳥の秘密』監修 川上和人 ・マンガ マツダユタカ 身近な野鳥の知っているようで、実は全然知らなかったあんなこと、こんなこと、面白くてびっくりするようなことがぎっしり詰まった一冊です。真面目な研究からわ…

天才はあきらめた

『天才はあきらめた』山里亮太 10日前、テレビではなくネットニュースでお笑い芸人の山里亮太さんと女優の蒼井優さんの結婚を知って、常日頃芸能ニュースにほぼ関心が無い私でさえ腰を抜かすほど驚いた。そして結婚会見の模様をYouTubeで見て、気づいたらこ…

引っ越し大名三千里

『引っ越し大名三千里』土橋章宏 ハルキ文庫 面白い!もう、最高に面白くて不覚にも何度も声を立てて笑ってしまった。 徳川家康の血を引く譜代大名でありながら、その生涯で七度の国替えをさせられた君主、松平直矩は、ついたあだ名が引っ越し大名。四度目の…

かりんとう侍

『かりんとう侍』 中島要 「生きるってなぁ、いいも悪いも関係ねぇ。起こったことを受け入れて、前に進むこってしょう。どれほど御託を並べたところで、起きちまったことをなしにはできねぇ」 旗本の次男坊、日下雄征は気ままな部屋住みの身。義姉に子がない…

トリニティ

『トリニティ』 窪美澄 1960年代から80年代、日本の雑誌文化が花開いて行った時代、その人気を牽引する雑誌を次々と創刊した出版社があった。そこで働いていた三人の女性たちの、三通りの人生を軸に、大正、昭和、平成へと至る時代の変化、特に戦後の昭和史…

事件

『事件』大岡昇平 創元推理文庫 1961年の夏、刺殺体が神奈川県の山林で発見される。被害者は地元出身で、飲食店を経営する若い女性。翌日、19歳の自動車工場勤務の少年が殺人及び死体遺棄の容疑で逮捕された。少年は殺人の罪状を認めており、自白もあった。 …

ショコラティエ

『ショコラティエ』藤野恵美 終わってしまうのがもったいなくて、この先が読みたい。そう思うほど素敵な少年少女の成長物語だった。しかも神戸を舞台に、美味しそうなケーキやチョコレートが次々と出てきて、その描写が過剰でなく、たまらなく上手いので読ん…

ペンギン鉄道なくしもの係リターンズ

『ペンギン鉄道なくしもの係リターンズ』 名取佐和子『ペンギン鉄道なくしもの係』の続編。やはり短編四話収録。この本をご紹介いただいた時、「これは2冊続けて読まなければならないお話」とあって、一度に2冊購入したものの、一巻の最終話でペンギンの謎も…

ペンギン鉄道なくしもの係

『ペンギン鉄道なくしもの係』名取佐和子 こちらでご紹介があって手に取った一冊。「ぶたぶたさん」シリーズを思わせる表紙にも惹かれて読みました。四つの短編が収録されています。 想像していたのとはかなり違っていて、第三話までは、ペンギンはこの話に…

つまをめとらば

『つまをめとらば』青山文平 太平の江戸の世にあって、身の置き所の無い下級武士の男たちの心許なさと、女たちの逞しさを描く。「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付け」「ひと夏」「逢対」「つまをめとらば」の六遍を収録。 男たちの生真面目さ、純情さ…

なぜ必敗の戦争を始めたのか

『なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議』 編・解説 半藤一利 本書は、雑誌『偕行』に掲載された陸軍中枢にいたエリート達の座談会の記録を半藤氏が改めてまとめ、解説を加えたもの。 陸軍側から語られる座談会なので、一般に広く認識されて…

みかんとひよどり

『みかんとひよどり』 近藤史恵 フランス料理店の雇われシェフ潮田は、飼い犬ピリカと鳥撃ちに出かけて冬山に迷い込み遭難。死にかけたところを猟師の大高に助けられる。料理人として行き詰まりを感じている潮田は、面倒な人との関わりを極力避けたがる無愛…

歩道橋の魔術師

『歩道橋の魔術師』呉明益 天野健太郎 訳 白水社 エクス・リブリス 1961年から1992年にかけて、台北に実在した大型商業施設「中華商場」を舞台に、そこで暮らす子供達の日常を描き出す連作短編集。 当時の台湾は経済成長期の最中で、鉄筋コンクリート造りの…

6時27分発の電車に乗って僕は本を読む

『6時27分発の電車に乗って僕は本を読む』ジャン=ポール・ディディエローラン 夏目大 訳 36歳のギレン・ヴィニョールは、この名前のために子供の頃から散々な思いをしてきた。何故なら、頭の文字を入れ替えると「ヴィレン・ギニョール」(醜い人形)になるから…

犬も食わない

藻 『犬も食わない』尾崎世界観、千早茜 ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観さんと、千早茜さんの共作恋愛小説。雪下まゆさんの、この装画と題字が一目見た時から好きで、ジャケ読み。 言葉が足りないグダグダなダメ男桜沢大輔、いつも苛立ってヒス…

平場の月

『平場の月』 朝倉かすみ 本当に切なかった。中年の男女の恋と言うよりも「慈しみ」の様な愛の話だと思った。 青砥健将50歳。転職、引っ越し、親の介護、離婚。息子たちは離婚を機に独立して疎遠。人生の山も谷も過ぎて都内から地元埼玉に戻った青砥の日常は…

父と私の桜尾通り商店街

『父と私の桜尾通り商店街』今村夏子 表題作を含めた短編6編を収録。どこか不穏さを孕んだ話。御伽噺の様な雰囲気を持つ奇妙な話。ほっこりしそうなのに読み終わったらうすら寒い気味の悪さが残る話…。 本人は健気で懸命なのに、その一生懸命さが世間とはズ…

西瓜糖の日々

『西瓜糖の日々』 リチャード・ブローティガン 藤本和子訳 アイデス〔iDEATH〕のすぐ近くの小屋に住んでいる「私」が語る日々。「私」には決まった名前が無い。私たちがノスタルジックに思い浮かべることがあったら、それが彼の名前になるらしい。 彼の住ん…

ブックショップ

『ブックショップ』ペネロピ・フィッツジェラルド 山本やよい訳 ハーパー・コリンズ 映画「マイ・ブック・ショップ」の原作。 物語の舞台は、1950年代後半のイースト・アングリア。海岸沿いの町で暮らす未亡人のフローレンス・グリーンは「オールドハウス」…

仮釈放

『仮釈放』 吉村昭 新潮社 不倫した妻を殺害、相手を刺傷、その老母を図らずも焼死させた男。彼は無期懲役の判決を受け、独房で15年余りの歳月を過ごして来た。無期刑囚にも仮釈放がある事を知ってからはそれに望みを託して模範囚として長年努め、もうすぐ50…

あふれでたのはやさしさだった

えでたのは 『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』 寮 美千子 西日本出版 童話作家の著者が、奈良少年刑務所で「社会性涵養プログラム」の講師を務めた10年近くの経験を書いたもの。著者が担当したのは絵本を使った朗読や簡単な朗…