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読書記録

ペンギン鉄道なくしもの係

『ペンギン鉄道なくしもの係』名取佐和子


こちらでご紹介があって手に取った一冊。
「ぶたぶたさん」シリーズを思わせる表紙にも惹かれて読みました。四つの短編が収録されています。


想像していたのとはかなり違っていて、第三話までは、ペンギンはこの話に関係無いんじゃ…?と思います。ペンギンは電車の中に居るか、大和北旅客鉄道波浜線遺失物保管所、通称「なくしもの係」の事務所に居るだけです。もちろん話したりもしません。本当に「なんで居るの?」です(笑)


それぞれの主人公の共通点は、電車の中でこのペンギンを目撃して驚く事と、忘れ物をして「遺失物係」のところまで取りに行くこと。そして誰もが心に屈託を抱えていたり、執着を手放せなかったり、「行き詰まって」いる人たちです。彼や彼女らが忘れ物を取りに臨海の駅にある「なくしもの係」を訪れ、赤毛でふにゃっと笑う不思議な雰囲気の職員と忘れ物についてやり取りするうちに、頑なに執着していた思い込みを手放し、忘れていた自分の気持ちを思い出して前を向いて歩き出す、そんな心に暖まる物語です。


が…第一話から第三話まではそれほど主人公たちに共感出来ず、ペンギン(このジェンツーペンギンの描写がものすごく可愛い)と赤毛の遺失物係の不思議な雰囲気や言動に助けられながら読んだ感じもありました。


しかし、第四話でそれまでの話と、このペンギンの存在の謎が全部繋がってちょっとウルっと来るような話になります。かなり重い背景が謎のペンギンと謎の赤毛の職員とそこを訪れた人物にあることがわかって、これは変わったファンタジーではなかったことに改めて気づかされ、最後はちょっとやられちゃったなぁ、と思ったのでした。

 

 

 


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