父と私の桜尾通り商店街
『父と私の桜尾通り商店街』今村夏子
表題作を含めた短編6編を収録。
どこか不穏さを孕んだ話。御伽噺の様な雰囲気を持つ奇妙な話。ほっこりしそうなのに読み終わったらうすら寒い気味の悪さが残る話…。
本人は健気で懸命なのに、その一生懸命さが世間とはズレている人たち。子供の頃、私自身もそれが変だとも思わずに持っていた拘りやマイルールみたいなものを、いい大人になっても持ち続けているような登場人物たちの姿が痛々しく切ない。
過剰にならない筆致で穏やかに始まった日常の出来事を読んでいるうちに、とんでもないところに連れて行く今村さん。狂気とも異常とも違うけれど、登場人物たちの「えっ?」と思うような言動に戸惑う。そしてそれぞれの話の主人公の境遇のその後が気になって気になって寝つきが悪くなりそうな今村ワールド。
『あひる』『こちらあみ子』『星の子』と読んできて、今回はタイトルからしてホンワカ系?と思ったら…益々言葉にならない、見て見ぬふりをして来た物を丁寧に見せられた感じでした。